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粟野真理子のパリおしゃれ通信

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マグリット新解説③ Magritte ③


こんにちは。
パリはまだまだ寒い日が続いています。それでも青空がのぞくと、みんな一斉に公園のベンチに出たりするのですから、どれだけ春を待ちのぞんでいることやら。マレのヴォージュ広場では、芝生のグリーンと雪の残った地面の白のコントラストが妙に面白かったです♪

 久しぶりにベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドである森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご紹介。森さんは、最近ではNHKの「迷宮美術館」で美術解説もなさっているそう。
 ここで、マグリットの経歴を簡単に説明しておこう。マグリットは1898年、ベルギーの西のレシーヌに生まれた。1904年から1915年まで、シャルルロワ近郊のシャトレに住む。1912年に母が入水自殺。1916年に、ブリュッセルの美術学校に入学。1922年に、幼なじみのジョルジェットと結婚。1925年、ジョルジュ・デ・キリコの作品「愛の歌」に触発され、シュルレアリスムヘ進む。1927年、ブリュッセルで初の個展。その後、パリに滞在し、フランスのシュルレアリストのリーダー的存在だったアンドレ・ブルトンらと交流。しかし、ブルトンとは相容れず、1930年にブリュッセルへ戻る。以後、ブリュッセルで創作活動を続け、1967年に没する。

 3回目は、森さんおすすめの作品のひとつをご紹介。夕闇迫る街。上空には木の葉が描かれその真ん中に満月がくっきり。作品はどこかで探すか、ベルギーのマグリット美術館で見てくださいね!

「白紙のページ」The Blank Page 1967年 
これはマグリットが好きだった詩人の一人で、19世紀のフランスの象徴派詩人マラーメを称えてつけられたタイトルだ。マラーメの詩には白紙の部分が多く、また「ページ」というタイトルの詩もあった。この絵でマグリットが言いたかったことは、1956年に同じアイデアで描かれた最初の作品「9月16日」で知ることができる。「9月16日」という作品は 大木の木の葉の前に三日月が出ている絵だ。それでは どうして「9月16日」というタイトルがつけられたのか。残念ながら1956年の9月16日には これと言った特別な出来事はない。しかし、その一月後に 17000人もの犠牲者をだしたハンガリー動乱があった。民主化と豊かな生活を求めるハンガリーの民衆を、ソビエトが武力で弾圧した事件だ。しかも画面上の三日月は ハンマーと鎌をあしらった旧ソビエトの国旗の鎌によく似ている。つまり マグリットは木の葉に隠れて見えないはずの月を前面に出すことで、信じられないことが起こった。その信じられないこととは、ハンガリーへのソビエト軍による武力介入だったのだ。もっと面白いのは、9月16日をフランス語で書くと、seize septembre となり、頭文字はssとなる。つまりナチスの武装親衛隊の名前になる。どれだけマグリットがソビエト軍のハンガリー介入に憎悪感を抱いていたか想像できる作品だ。

 マグリットの作品は、「目に見える思考」と置き換えられる。単なる静かな夜の風景ではなく、その静かな絵の狭間に強烈な社会的諷刺が横たわる。淡々と、しかも鮮やかな皮肉を込めた作品に、マグリットの冷静な視線が感じられる。




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by madamemariko | 2010-02-14 06:46 | 美術散歩
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