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粟野真理子のパリおしゃれ通信

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「不東庵 創作の軌跡 細川護煕展」

こんにちは。
パリもようやく暖かくなり、お花屋さんの店先には、黄水仙や淡いピンクやオレンジレッドの小ぶりのチューリップが出回り、春の気配を感じます♪

 先日、午後の昼下がりに、凱旋門の目と鼻の先にある三越エトワールに、「細川護煕展」を鑑賞しに出かけた。元首相であり、細川家18代の当主である細川氏の作品については、いろいろな業界の方からお話を伺っていたので、ぜひ一度拝見したいと思っていた。そして、やっとその機会が訪れた。やきものは昔から好きだが、パリに暮らしていると、そうそうは日本の陶芸を見ることができない。日本に一時帰国したときか、パリなどで展覧会が催されたときしか、本物を見る機会がない。なので、ふだんは自分のお気に入りの、やきものの本などに掲載されている陶器を食い入るように眺めたりしている。でも、いい物は写真にもしっかりその精神が投影されていて、たとえ小さな写真と言えども、魅力というのは伝わるものだ。私はそうしたものを飽きずに、ときどき眺めている。

 細川氏は政治の職を退かれてから、湯河原に草庵を構え、そこで半日農作業、半日読書のような晴耕雨読な生活を送りたいという念願を遂行。とくに、人間の基本的な営みである「大地に触れる」ということをしたいという思いで、工房の「不東庵」で作陶に励まれたという。目指したのは、桃山時代に千利休に依頼されて楽茶碗を作り始めた楽家の長次郎のような茶碗。長次郎が作ったような漆黒の深さを湛えた肌合いに、なんとか迫ろうとしたそうだ。

 まずは、そんな細川氏の思いを語られた短いビデオを見る。窓から凱旋門が見渡せる展示室は1階〜3階にわたり、楽茶碗ややきもの、そして、実際と同じ大きさの茶室もしつらえられ、本格的な展示。そのほか、極められた書もあちらこちらに展示され、フランス人の年配の方々が熱心に覗き込んでいる。

 展示室に入ると、作られたお茶碗に引き寄せられる。吸い込まれるように眺めたのは、奥に飾られていた黒茶碗。轆轤を使わない手びねりの風合いに打ち込んだ作者の心意気が感じられる。そして、私のお気に入りのやきものの本のなかにある、光悦の赤楽茶碗「乙御前」や鼠志野茶碗「峰紅葉」などを彷彿させるお茶碗が並んでいる。10年くらいの歳月を費やして、作られたやきものの数々。その情熱と感情は、レベルの高い造形という形で表現されている。細川氏が、ある書の一節に書かれている「生き生きとした風を残した」という言葉は、そのまま細川氏の作品にもあてはまるようだった。もうこれでおしまいということではなく、また、さらに何年後かに清々しい風とは違う、別の心象風景を映したやきもの、とくにお茶碗を拝見したいと思った。

「Au Bord du Ruisseau HOSOKAWA Morihiro」
Espace des Arts MITSUKOSHI ETOILE
〜5月15日まで
3 rue de Tilsitt 75008 Paris
☎01-44-09-11-11




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by madamemariko | 2010-03-19 09:10 | 美術散歩
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