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粟野真理子のパリおしゃれ通信

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カテゴリ:美術散歩( 29 )

「紙に描いた名品展」@ギャルリーためながパリ 

こんにちは。
すっかり秋の気配が感じられる季節になりました。そろそろキノコご飯でも作りたくなってきます。日本の暑い夏を経験して帰ってきたばかりなのに、やっぱり夏が名残惜しくなってしまいます♪

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 シャンゼリゼのロン・ポワン・デ・シャンゼリゼから伸びるマティニョン通りは、高級アートギャラリー街。その中心にある日本の老舗画廊、ギャルリーためながで、「紙に描いた名品展」と名打った展覧会が開催されているので、おじゃましてきた。ギャルリーためながは、パリで最大規模を誇る大きな画廊で、いつも近代の巨匠の油彩の作品や現代の売れっ子画家の作品を扱っている。今回の展覧会はいつもと少し趣向が変わり、紙を使用した水彩画やデッサンなどが中心。ぱっとみた印象はいつもの王道の華やかさには欠けるが、それだけに「紙」にこだわった質の高い作品の展示が興味深い。

 
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 ルドンやルオー、シャガール、ピカソ、レジェ、カンディンスキー、マチス、ビュッフェ、ジャコメッティなど扱うアーティストは一級揃い。しかし、ひとつひとつがふだんあまり目にしないタイプの作品がちりばめられている。私のお気に入りのルオーやシャガールも、ある意味あっさりしたタッチが妙に新鮮に感じられる。そのなかには、アンドレ・ブルトンが「もっとも純粋なシュルレアリスト」と称したというタンギーの作品などもあり、彼らの瑞々しい感性が生に伝わってくる。また、印象派の画家と同世代でありながら、幻想の世界を表現しつづけたルドンの作品も目を引いた。芸術の秋にふさわしい展覧会に出会えた。
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「OEUVRES SUR PAPIER」
Galerie Tamenaga
18 Av.Matignon 75008 Paris
10月6日まで



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by madamemariko | 2010-09-28 09:12 | 美術散歩

村上隆展@ヴェルサイユ宮殿

こんにちは。
だんだん日が沈むのが早くなり、最近は午後8時を過ぎると暗くなり、また秋の訪れを感じています。そして、朝夕の寒いこと!今朝は6度くらいを記録し、もう暖房を入れたくなるほどです。夏が終わるのは残念だけれど、秋の味覚を楽しむこととしましょう♪
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 9月14日からヴェルサイユ宮殿で始まった「村上隆」展に出かけてきた。フランスのメディアなどでも大きく紹介されているので、やはり一度は自分の目で確かめてみたかった。ヴェルサイユと言えば、世界遺産に登録されている世界有数の観光スポット。1日に2万人くらいの入場者があるというのだから、半端な数ではない。それもいまの時期ならヴェルサイユに行けば、もれなく村上作品が見られるという仕掛け。つまり、村上作品の特別展が別立てにあるわけではなく、宮殿の各所や庭に作品が展示されているのだ。

 2年前に同じ場所で開催されたアメリカ人現代アーティストのジェフ・クーンズ展もそうだったように、「歴史的遺産の場所に前衛的なものを配し侮辱的」と反発する極右系グループが抗議運動しているようだ。が、それは新しいものが造られるときの常。あのエッフェル塔やポンピドゥー・センターだって創設当初は思い切り非難を浴び、歴史とともに淘汰され認められてきたのだから、ある意味一般のフランス人はこうした新しいアートの試みに寛容だ。現代アートを楽しみ、きちんと自分の意見を言える資質が小さいころから形成されているのが、フランスの文化教育の良さだ。

 さて、実際宮殿内に入って見学していくと、村上作品の回りは黒山の人だかり。写真を撮るときは、人が少しひいたときを狙ってシャッターを押しているので、あまり人の気配が感じられないが、実は押し合いへしあいのすごい人なのだ。村上氏は「時代の過去と今を衝突させ突破する。西洋と東洋のめぐり合いの違和感と調和にチャレンジする」とTVのインタビューで語っているように、このルイ王朝の華麗な装飾のなかで、ジャパンモダンアートを炸裂させている。正直反応はいろいろで、こんな場所にちぐはぐだとか、よくわからないという声も上がっていたが、とにかく作品を見てみたいという人で大混雑状態。このある種、不思議の世界に引っ張り込む大きな磁力、吸引力みたいなものが放たれ、村上ワールドを作りあげている。ただ、ケースに入ったものや小さなフィギュアなどはパワーに欠けていた。

 荘厳なヘラクレスの間の「とんがりくん」や煌びやかな鏡の間のフラワー彫刻、庭園の「オーヴァル・ブッダ」などが会心作という。アートディーラーたちの間では、村上作品のコレクターたちのアートバリューを保つためのパフォーマンスといううわさも流れたが、いろいろな意味で刺激される現代アート展だった。
MURAKAMI VERSAILLES
9月14日~12月12日



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by madamemariko | 2010-09-19 12:56 | 美術散歩

「土田康彦」展 Yasuhiko Tsuchida

こんにちは。
サッカーのワールドカップが始まり、パリの動きも微妙に変化。試合があると道路はすいています。とくに夜8時代から始まる試合は、TV観戦しながらお家ご飯かカフェでアペロといった感じです♪

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 6月2日から、パリの吉井画廊で「土田康彦」展が開催中だ。その1ヶ月くらい前から、ギャラリーの人に、土田氏の白いガラス工芸の作品の話を聞いていたので、興味を惹かれていた。オープニングパーティには、土田氏のことをたまたま知っていた知り合いの写真家の人と一緒になった。写真家の視線も鋭いので、その反応もまた興味深い。土田氏はツッチーと呼ばれているそうだ。

 そして、翌日。誰も来廊者のいない時間に、また画廊に出かけ、ひとりで静謐な時間のなかで作品を拝見した。作品は自然光のなかで、静かな空間で見るに限る。土田氏は1991年にヴェニスに渡り、ガラス工芸を目指す。そして、94年からムラノグラスの工房で作品に打ち込み、吉井長三会長と出会い、「エジプト時代のキクラデスの大理石のような研ぎ澄まされた白をガラスで作ったらどうか」との提案があり、今回の展覧会に至ったという。つねづね思っているが、吉井会長の美的センスと行動力は素晴らしい。興味があるところにはすぐに飛んで行かれる。土田氏に白だけに特化したガラスを薦めるあたりもさすがだ。

 ひとりで眺めているうちに、吉井会長が見えた。ふたりで作品のうつわや皿に触れてみたり、2階の箱庭のつくばいで、うつわに水を入れてみたり、浮かべてみたり。そして、ガラスの透明感や光の陰翳を楽しむ。吉井氏は、土田氏がすでに作品をいろいろ創作し、色彩豊かなムラノグラスの作品を発表し入賞したりしているけれども、氏はこれらは好きではないとおっしゃる。私もサイトなどで作品をチェックしているが、白のガラスだからこそ惹かれるのだ。

 そんなことをあれやこれやとお話していたら、ご本人の土田氏が登場した。
「ムラノグラスと言えば、無限大に色を作り出せすますが、私も実はあえて白だけにこだわったものを作りたいと前々から思っていました。白はごまかしがきかないのです。ガラスを吹いて、ダイヤモンドで研磨する。このストイックな作業で、一日中過ごしています」
 と創作の話になると目が輝く。出来上がったものから、作品として世に出すものはほんの少しという。気に入らなかったものは粉々にした山が工房にあると聞いて、それが無性に見てみたくなった。まるで陶器のように見えたりする作品。でも、間近で見ると透けている部分や、ガラスの凹凸にニュアンスがある。11〜12種類の鉱物の混合でできあがる白のガラス。ムラノのマエストロの伝統的な技法をベースに、土田氏の感性とパッションが織り成すクリエイション。3人で話している間にも、アメリカ人の品のいい女性が展覧会のポスターに掲載された大きな作品を、ぽーんと一目惚れでお買い上げしていった。今後も白のガラスの行方に目が離せない。

「Yasuhiko Tsuchida」6月30日まで
Galerie Yoshii
8 Av.Matignon 75008 Psris
tel:01-43-59-73-46




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by madamemariko | 2010-06-14 21:54 | 美術散歩

マグリット新解説④ Magritte ④

こんにちは。
フランス、そしてヨーロッパはアイスランドの火山噴火、火山灰の雲の影響で、主要な空港が閉鎖。私も明後日に海外フライトを控えているので、どうなることやら。早く噴火がおさまってくれることを祈ります♪

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 またまたひさしぶりになってしまいましたが、ベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドの森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご紹介。

「これはパイプではありません」 This Continues to Not Be a Pipe 1929年(原作)
マグリットの代表作のひとつ。これとほぼ同様の作品がロサンジェルス美術館に所蔵されている。ここでマグリットが言おうとしたことは、これは紙に描かれたイメージであって、本物のパイプではない。だからパイプではないのだ、ということ。でもパイプは彼にとって、もっと深い意味をもっていた。悪いことをいっぱいした青年時代のマグリットが大好きだったアメリカの探偵小説に「ニック・カーター」というのがある。いつもパイプを片手に横目でにらみながら犯人を追いかける探偵ニック・カーターにマグリットはずいぶんほれ込んで、パイプをくわえて横目でにらむ自分の顔を写真にとらせて、それを名刺代わりにしていた。つまりパイプは青年時代のマグリットの象徴だった。苦い思い出ばかりある青年時代をつとめて語ろうとしなかった彼が、この後、パイプをほとんど作品の意匠として用いなくなったのは決して偶然ではないだろう。そして1930年に、アンドレ・ブルトンがジョルジェットがつけていた十字架をとがめたことに憤慨したマグリットは、大恐慌の最中で経済的にもパリではやっていけなくなった理由もあって、ブラッセルに戻る決意をする。

 マグリットのおなじみのパイプの絵だが、この解説にあるように青年時代はかなり悪いことをしていたというマグリット。そして、決定的な出来事も起こるのだが、ここしばらくは作品の解説をお楽しみください。実はこの解説のなかにも、えっと思う事実が含まれているのだ。




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by madamemariko | 2010-04-19 11:32 | 美術散歩

「不東庵 創作の軌跡 細川護煕展」

こんにちは。
パリもようやく暖かくなり、お花屋さんの店先には、黄水仙や淡いピンクやオレンジレッドの小ぶりのチューリップが出回り、春の気配を感じます♪

 先日、午後の昼下がりに、凱旋門の目と鼻の先にある三越エトワールに、「細川護煕展」を鑑賞しに出かけた。元首相であり、細川家18代の当主である細川氏の作品については、いろいろな業界の方からお話を伺っていたので、ぜひ一度拝見したいと思っていた。そして、やっとその機会が訪れた。やきものは昔から好きだが、パリに暮らしていると、そうそうは日本の陶芸を見ることができない。日本に一時帰国したときか、パリなどで展覧会が催されたときしか、本物を見る機会がない。なので、ふだんは自分のお気に入りの、やきものの本などに掲載されている陶器を食い入るように眺めたりしている。でも、いい物は写真にもしっかりその精神が投影されていて、たとえ小さな写真と言えども、魅力というのは伝わるものだ。私はそうしたものを飽きずに、ときどき眺めている。

 細川氏は政治の職を退かれてから、湯河原に草庵を構え、そこで半日農作業、半日読書のような晴耕雨読な生活を送りたいという念願を遂行。とくに、人間の基本的な営みである「大地に触れる」ということをしたいという思いで、工房の「不東庵」で作陶に励まれたという。目指したのは、桃山時代に千利休に依頼されて楽茶碗を作り始めた楽家の長次郎のような茶碗。長次郎が作ったような漆黒の深さを湛えた肌合いに、なんとか迫ろうとしたそうだ。

 まずは、そんな細川氏の思いを語られた短いビデオを見る。窓から凱旋門が見渡せる展示室は1階〜3階にわたり、楽茶碗ややきもの、そして、実際と同じ大きさの茶室もしつらえられ、本格的な展示。そのほか、極められた書もあちらこちらに展示され、フランス人の年配の方々が熱心に覗き込んでいる。

 展示室に入ると、作られたお茶碗に引き寄せられる。吸い込まれるように眺めたのは、奥に飾られていた黒茶碗。轆轤を使わない手びねりの風合いに打ち込んだ作者の心意気が感じられる。そして、私のお気に入りのやきものの本のなかにある、光悦の赤楽茶碗「乙御前」や鼠志野茶碗「峰紅葉」などを彷彿させるお茶碗が並んでいる。10年くらいの歳月を費やして、作られたやきものの数々。その情熱と感情は、レベルの高い造形という形で表現されている。細川氏が、ある書の一節に書かれている「生き生きとした風を残した」という言葉は、そのまま細川氏の作品にもあてはまるようだった。もうこれでおしまいということではなく、また、さらに何年後かに清々しい風とは違う、別の心象風景を映したやきもの、とくにお茶碗を拝見したいと思った。

「Au Bord du Ruisseau HOSOKAWA Morihiro」
Espace des Arts MITSUKOSHI ETOILE
〜5月15日まで
3 rue de Tilsitt 75008 Paris
☎01-44-09-11-11




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by madamemariko | 2010-03-19 09:10 | 美術散歩

「ジル・ゴリチ新作展」

こんにちは。
一昨日はひな祭り。パリに暮らしていますが、日本の四季は感じていたいので、毎年お雛さまを飾っています。箱から出さないのも可哀想だし。パリのアパルトマンで見るお雛さまは、なんだか新鮮に映ります。白酒はないので、ワインで乾杯しておきました♪

 フランスのバスクとパリにアトリエを持ち、パリ画壇で活躍するジル・ゴリチ氏の新作展覧会が、東京、日本橋三越本店で、3月3日から始まった。私は残念ながらパリにいるので、この展覧会は拝見できないが、新作はやはり気になるところ。

 ゴリチ氏を初めてパリで取材したのは、3年くらい前のこと。白髪のダンディな紳士で、美術や文学、音楽、食に造詣が深く、ギターやハープも弾きこなすという多彩ぶり。その時は女性誌の仕事だったが、その後メンズ系の雑誌で、またご登場いただいた。特集内容は、「世界の時計好きが選んだ、いま欲しい腕時計」。ゴリチ氏は、古いジャガー・ルクルトやロレックスなどを持っていらっしゃっるのを知っていたので、お願いしたのだ。彼が選んだのは、「ブライトリング」のコックピットタイプだったが、雑誌が発行されてから、その記事を読まれた俳優の高倉健氏が、なんとこれと同じ腕時計をお買い上げされたという後日談がつく。とても美意識の高いゴリチ氏が、その腕時計を選んだのは、スポーティでありながらエレガントなエスプリがあるところ。絵の作品に関しても同じことが言え、静物画にしても風景画にしても、本人の薫り高いエレガンスが感じられる。

 お父上は、今も画壇のトップで活躍中の巨匠のアイズピリ。親戚には、同じく画家の鬼才、アントニオ・クラヴェもいて、血筋の良さはピカイチだ。画風はそれぞれ異なるが、アーティストとしてのスピリットが感じられる。日本での展覧会はある意味「日本仕様」で、エレガントな上がりだと想像するが、ゴリチ氏の真髄はもっと違うところにあるような気がする。バスク出身であることを誇りに思い、そこから影響を受けたものが叡智となって、作品のあちらこちらから匂いたつ。そんな作品が、ゴリチ氏の骨頂だと思う。

 とは言っても、色使いはいつも美しい。以前にパリで個展を開かれたときの作品などは、例えて言えば、丹念に熟成して出来上がった色の煌めき、というところだろうか。忘れられない美しい色に満ちていた。花菖蒲のような紫、闘牛をイメージするような赤、熟成されたブレンドのコニャックのような色…。溜め息が出るような色彩に釘付けになった。さあ、今回の日本橋三越本店、プレスティージの高い特選画廊での展覧会。日本のゴリチファンの方にも、じっくりその質の高さを味わっていただきたい。画廊の方のお話では、今回は我らがゴリチ氏のDVDも発売されるそう。みんなでご贔屓になっていただき、画家の本質に迫っていただきたい。

「ジル・ゴリチ新作展」
日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
3月3日〜9日まで
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?p=ジル・ゴリチ/三越日本橋




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by madamemariko | 2010-03-05 03:48 | 美術散歩

マグリット新解説③ Magritte ③


こんにちは。
パリはまだまだ寒い日が続いています。それでも青空がのぞくと、みんな一斉に公園のベンチに出たりするのですから、どれだけ春を待ちのぞんでいることやら。マレのヴォージュ広場では、芝生のグリーンと雪の残った地面の白のコントラストが妙に面白かったです♪

 久しぶりにベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドである森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご紹介。森さんは、最近ではNHKの「迷宮美術館」で美術解説もなさっているそう。
 ここで、マグリットの経歴を簡単に説明しておこう。マグリットは1898年、ベルギーの西のレシーヌに生まれた。1904年から1915年まで、シャルルロワ近郊のシャトレに住む。1912年に母が入水自殺。1916年に、ブリュッセルの美術学校に入学。1922年に、幼なじみのジョルジェットと結婚。1925年、ジョルジュ・デ・キリコの作品「愛の歌」に触発され、シュルレアリスムヘ進む。1927年、ブリュッセルで初の個展。その後、パリに滞在し、フランスのシュルレアリストのリーダー的存在だったアンドレ・ブルトンらと交流。しかし、ブルトンとは相容れず、1930年にブリュッセルへ戻る。以後、ブリュッセルで創作活動を続け、1967年に没する。

 3回目は、森さんおすすめの作品のひとつをご紹介。夕闇迫る街。上空には木の葉が描かれその真ん中に満月がくっきり。作品はどこかで探すか、ベルギーのマグリット美術館で見てくださいね!

「白紙のページ」The Blank Page 1967年 
これはマグリットが好きだった詩人の一人で、19世紀のフランスの象徴派詩人マラーメを称えてつけられたタイトルだ。マラーメの詩には白紙の部分が多く、また「ページ」というタイトルの詩もあった。この絵でマグリットが言いたかったことは、1956年に同じアイデアで描かれた最初の作品「9月16日」で知ることができる。「9月16日」という作品は 大木の木の葉の前に三日月が出ている絵だ。それでは どうして「9月16日」というタイトルがつけられたのか。残念ながら1956年の9月16日には これと言った特別な出来事はない。しかし、その一月後に 17000人もの犠牲者をだしたハンガリー動乱があった。民主化と豊かな生活を求めるハンガリーの民衆を、ソビエトが武力で弾圧した事件だ。しかも画面上の三日月は ハンマーと鎌をあしらった旧ソビエトの国旗の鎌によく似ている。つまり マグリットは木の葉に隠れて見えないはずの月を前面に出すことで、信じられないことが起こった。その信じられないこととは、ハンガリーへのソビエト軍による武力介入だったのだ。もっと面白いのは、9月16日をフランス語で書くと、seize septembre となり、頭文字はssとなる。つまりナチスの武装親衛隊の名前になる。どれだけマグリットがソビエト軍のハンガリー介入に憎悪感を抱いていたか想像できる作品だ。

 マグリットの作品は、「目に見える思考」と置き換えられる。単なる静かな夜の風景ではなく、その静かな絵の狭間に強烈な社会的諷刺が横たわる。淡々と、しかも鮮やかな皮肉を込めた作品に、マグリットの冷静な視線が感じられる。




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by madamemariko | 2010-02-14 06:46 | 美術散歩

バルテュス節子氏の展覧会 Setsuko Klossouwska de Rola

こんにちは。
パリは寒さからようやく抜け出し日中で6度くらいまで上がり、春のきざしが見え出しました。パリジェンヌたちは春の装いをどうするか、やっとそんなことを考える気分になってきたようです♪

 現代具象絵画の巨匠、故バルテュスの夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラさんの個展が、
1月11日からパリの吉井画廊で始まった。節子さんとはバルテュスを通して35年のおつきあいという吉井長三会長が企画されたもので、エチュードを中心に12点の新しい作品が展示された。

 ヴェルニサージュの日に、吉井会長のお取り計らいでお話を伺わせていただく機会を得た。節子さんには、数年前にスイスのご自宅、グラン・シャレに取材でおじゃましたことがある。久しぶりにお目にかかる節子さんは、彌勒菩薩のような崇高な表情がはっとする美しさ。紅鳶色の赤のお着物がことのほかよくお似合いだ。

 「現在はなんでも便利になり、それらに呑み込まれてしまい、本当に大切なことを見失いそうになっているような気がします。そんななかで、私は五本の指を動かして絵を描いたり、手仕事をしたいと考えています」。そうおっしゃる節子さんの作品が、画廊の階下で静かに、しかも何かを訴えかけるように並ぶ。

 「長くヨーロッパに住んでいると、いろいろな形でギリシア神話に接っします。私はギリシア神話に登場するレダやミネルヴァ、エコーなどに心惹かれ、今後こうした題材をもとに描きたいと思っています」。快活に話をし、外の世界に興味を持ち冒険心に溢れ、精力的に行動される節子さんは、ある意味ギリシア神話に出てくる女神のひとりのような存在。そんなことを感じさせられる素敵な展覧会だった。

Galerie Yoshii
「Setsuko Klossowska de Rola」展
8 Av. Matignon 75008 Paris tel:01-43-59-73-46
〜1月30日まで。

写真:節子さん、節子さんと吉井画廊の吉井長三氏、節子さんとジュエリーデザイナーの娘のハルミさん、ハルミさんのご友人で著名なプランス・ド.サヴォワ氏と夫人で女優のクロチルド・クローさんらに囲まれて。岩絵の具などを使った繊細なタッチの作品。アトリエでは、モーツァルトのあらゆる音楽に触発されるという。
 



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by madamemariko | 2010-01-25 04:00 | 美術散歩

マグリット新解説②  Magritte ②

新年明けましておめでとうございます。
カウントダウンのときには、近所から「Bonne Annee(新年おめでとう)!」の声があちこちから聞こえ、車のクラクションを鳴らす音が高らかに響き、新年の幕開けを実感したところです。
皆様、今年もどうぞ良いお年をお過ごしください♪

 先月から、ベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドである森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご披露している。マグリットのことを調べると、小市民を装ったマグリットの伝記が書かれている。が、果たしてそこに書かれていることは真実なのだろうか。彼が描いた作品は謎に満ちたメッセージとも捉えられる不可解な内容の作品が多い。これはなぜなのか?マグリットに興味を持った者なら誰しも感じることで、これを美術的見地からではなく、心理学的に検証しようとした人物がいる。それを私に教えてくれたのが森氏だった。

 その人物とは、ベルギーのルーヴァン大学で講師を務める、精神分析学者のロワザン博士だ。彼はマグリットの作品に魅せられ、マグリットの心理について小論文を書くつもりで、彼が幼少のころに過ごした場所を訪れた。そこで、マグリットの隣人だった人に意外なことを聞いたことがきっかけで、マグリットのことについて10年以上も調査を費やしたという。このブログでは、ロワザン博士が調査した内容や森氏のことをご紹介しながら、マグリットの作品を繙いていきたい。

 2回目は、マグリットファンが好きな青空が出てくる作品をご紹介。私もとても気になる作品のひとつだ。森氏の解説をお楽しみください。

「帰還」1940年 
星の光る夜空に、真昼間の青空をくりぬいたハトが、卵が三つある巣に戻ってくる。夜と昼間の組み合わせという点では後の「光の帝国」を彷彿させるが、ここで肝心な点はそれではなくて、この絵が制作されたいきさつだ。
1940年5月10日に、ドイツ軍はベルギーに宣戦布告なしに進入してきた。そして5日後の5月15日には、ドイツ軍はパリに向けて進軍を始めていた。そこでマグリットは親友スキュトウネール夫妻と汽車でフランスへの脱出をはかる。でも妻のジョルジェットは盲腸炎に苦しみ連れて行くことができなかった。そしてマグリット自身もブラッセル発のパリ行きの汽車がなくなっていたために、立ち往生していた。ようやくフランス国境をこえてフランスのリールまでたどり着き、そこからパリ行きの列車に乗ることができた。パリに着くと、今度はパリ郊外の友人クロード・スパークの家に行き、預けてあった自分の作品を取り戻して金に換え、フランス南西のカルカッソンへ逃げた。このクロード・スパークという人物は、戦前・戦後ベルギーの外務大臣を務めたオンリ・スパークの弟だ。大変興味深いのは、当時クロード・スパークはポール・デルボーの親友でもあって、マグリットがたずねていったスパークの家は、1948年の暮れに、ポール・デルボーがタムと駆け落ちしていった家でもある。
残念ながら親友スキュトウネール夫妻はジロンド地方でピカソと出会い、マグリットはたった一人でカルカッソンにたどり着き、そこで耐乏生活を余儀なくされる。一か月後にスキュトウネール夫妻がカルカッソンに来てくれたものの、彼の頭の中にはベルギーに残したジョルジェトのことしかない。何とかしてベルギーの妻の下に戻りたい。そう願うのだが、占領下で簡単にはベルギーに戻れない。おまけに、列車で旅行するには自由通行証が必要で、それが取れる見込みもない。とうとう彼は自転車でベルギーに戻る決意をする。でも、あっという間に力尽きて、カルカッソンにまいもどった。そして、8月4日にとうとう自由通行証を入手したが、戦争中のことゆえ、なにが起こるかわからない。しかも彼はナチスから退廃芸術とみなされていたシュールレアリスムの画家。そこで彼はニースまで避難していたスキュトウネール夫妻に「ベルギーに着く前に、もし死んでしまったなら、ジョルジェットに、最後の瞬間までおまえを愛していたと伝えてくれ」と書いた遺書を郵送して出発した。この絵は、そうして命がけでたどり着いたベルギーの妻のそばで描いた作品だ。だから「帰還」なのだ。

 解説を読むとマグリットの生きた足跡が見えてくる。平和を希求する気持ちか、それとも別の意味なのか、マグリットの深層心理が明暗のある描写のなかでおぼろげに浮き彫りにされてくる。




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by madamemariko | 2010-01-02 04:35 | 美術散歩

マグリット新解説①  Magritte ①

こんにちは。
パリは今週は雪が降り、気温が1度前後とすごく冷え込んでいます。こんな夜はお鍋に限る!私は土鍋を大・中・小と持っているので、その日の状況に応じて、使いわけています。ひとりで食べるなら、おひとりさま用鍋。親しい友だちを呼んで食べるときは、2人用の中鍋、大勢で食べるときは大鍋で。水炊きや鴨鍋、豚&白菜鍋、石狩鍋などを作りまりした。日本酒やワイン、シャンパンをお供に楽しんでいます♪

 今年の5月末に、「日経ビジネス」の読者向けライフスタイル・マガジン「日経プライヴ」の取材で、ベルギーのブリュッセルに出かけた。6月に新しくオープンの「王立マグリット美術館」の取材のためだ。それまでマグリットのことと言えば、教科書に出てくる絵画や作品の「光の帝国」のことくらいしか知らないので、急いで作品や経歴などをネットで調べたり、画廊関係者にお話を聞いたりして、下調べをした。

 現地に着いたら、美術館の公認専属ガイドで美術史家の森耕治氏が、マグリットの作品について説明してくださったのだが、それがすごくユニークで詳しくて、私は思わずその説明内容に聞き入った。パリに戻ってから、いくつか質問内容があったので、森氏にいろいろ電話でお伺いしているうちに、森氏は「マグリットの通説の伝記は実は真実ではなく、もっと本当の真実があるのです」とおっしゃる。たとえば、マグリットの母は原因不明の自殺をしているが、それには確固たる原因があったのだなど、次から次へと話される内容に驚かされた。マグリットの熱烈なファンでもない私が聞いても、興味深い話。その内容は追々ご説明しながら、私がはまった、森氏が膨大な資料からまとめたマグリットの作品の新解説について、森氏のご了解を得て拙ブログでご披露させていただく。最後にその作品の画像も入っているので、ご覧ください。

 1回目は、私がいちばん興味を引かれた作品「秘められた競技者」について。森氏の原文の抜粋でご紹介。短い説明の作品もあるが、この作品については長いので、ご了承を!

「秘められた競技者」1927年  
この作品は幅が2メートル近くあり、前年に制作されたシュールレアリスムのデビュー作「迷えるジョッケー」、そして「ピレネーの城」と並んで、彼の作品の中では、壁画を除いては最も大きいもの。しかも、この作品を制作してから30年間は、1メートルを超える作品はほとんど制作していない。理由は簡単で、その後引っ越したエスゲム通りの家の台所兼アトリエが狭すぎて、1メートルを超える大作を描くスペースがなかったためだ。  
この絵には、9本のチェスのコマ、白色の歩兵のポーンが描かれ、その白いポーンには桜の花が咲いているように見える。これが歩兵のポーンだとすると、作品左側には敵の黒いコマの歩兵がいるはず。ところが、実際に見えるのは箱のなかに閉じ込められた猿ぐつわをはめられた女性と、野球に興じる男性二人。さらに奇妙なのは、ボールの変わりに空を飛ぶ海がめ。野球に興じる二人のライバルプレイヤーもいない。
この絵を解釈するには、マグリットが大好きだったエドガー・アラン・ポーの短編小説「メルツエルのチェス競技者」、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」と「不思議の国のアリス」の三作を読む必要がある。
この画面は、空想上のチェス盤の白いコマの陣営の光景なのだ。そして、チェスの白陣営のお話は「鏡の国のアリス」で紹介されている。主人公のアリスが、白陣営のコマボーンになって敵の女王を倒す話だ。それでコマも競技者も 、閉じ込められている女性もすべて白。そして左側の見えないライバルのプレイヤーは、黒色のコマナイトを動かして白陣営に攻撃をかけて、主人公のアリスを捕虜にしようとした。ナイトは敵のコマを飛びこして移動できるコマ。ところがナイト、つまり馬であるはずのコマが、ここではのろのろの空飛ぶ海がめに置き換えられているところが奇妙であり、愉快な点だ。マグリットはこの海がめを、当時のラルース辞典のイラストから借用したといわれている。そして「鏡の国のアリス」では、あやうくアリスが捕虜になりかけたとき、正義の味方の白いナイトが現れてアリスを救った。8個しかないはずの白いコマが9個あるのは、もしかすると、アリスまたはナイトの存在を暗示しているのかもしれない。
そして、背景に見える桜の木は、「不思議の国のアリス」の第8章で、大きな白いバラの木をわざわざ赤く塗る3人の庭師の話として書かれている。また画面上の野球競技者のエピソードは、同じ第八章で現在のゴルフに似たクロケー競技の話として書かれている。今となってはマグリット本人に確認はできないが、このクロケーと野球に似たクリケットは綴りと発音が似ている上に、二つとも当時のベルギーではほとんど知られていないスポーツ。そのために、マグリットがクロケーと野球を混同した可能性がある。また海がめの話は「不思議の国のアリス」の第9章で、「にせ海がめ」の話として出てくる。しかもそのグリフォンという海がめは、もともと学校にも通ったことのある海がめだったが、事情があって鳥のような羽のある怪物になったと書かれている。だから当然この絵のように空を飛べるのだ。
では、タイトルの「秘められた競技者」は何を意味しているのだろうか。よく言われているように、左側の見えないライバルのことではない。解答の鍵はエドガー・アラン・ポーの小説「メルツエルのチェス競技者」にある。
メルツエルのチェス競技者というのは、1769年にハンガリーのケンぺルン男爵によって作られたチェスをする「トルコ人」とよばれるロボット。暗い劇場の中で、6本の蝋燭に照らされたチェス盤のまえに座ったロボットは、トルコ風の服に身をつつみ、左手で実際に、人間相手にチェスをしたそう。でも、エドガー・アラン・ポーは、彼の小説のなかで、このロボットのなかに、実は人間が隠れていて、機械仕掛けの腕を動かしていることを見事な推理で暴露した。
今作品の「秘められた競技者」は、ロボットの中の隠れた人間を暗示している。それは、狭い箱のなかに閉じ込められ猿ぐつわをはめられた、でもなぜか手だけは自由に動かせる女性のことだ。女性は狭い箱の中で、猿ぐつわをはめられているにもかかわらず、自由な右手で棒のようなものを持って、ロボットの左手を秘かに操作してチェスをしている。だから「秘められた競技者」なのだ。

 以上が、この作品の解説だ。実際にこの大きな作品を眺めると迫力がある。解説がなければ、いったいこれは何?と思ってしまう、見る人の想像力を掻き立てる力がある。さあ、これからマグリットの魅力に、どっぷりはまっていきたい。




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by madamemariko | 2009-12-21 12:05 | 美術散歩