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粟野真理子のパリおしゃれ通信

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「北野武/ビートたけし展@カルティエ現代美術財団」

こんにちは。
昨日も寒かったです。空は晴れているのに、空気が冷たくて。パリコレで、私が好きなブランドのひとつ、ポール&ジョーのショーを見に行ってきました。相変わらず、デザイナーのソフィーは感じが良くて、チャーミング!今回の作品もソフィーらしさが出ていました♪

 ラスパイユにあるカルティエ現代美術財団に、「北野武/ビートたけし展 Gosse de peintre
絵描き小僧」の展覧会(内覧会)に出かけてきた。パリでは、映画監督として北野武の人気は高い。が、おそらくお笑いのビートたけしという側面を知らない人が多いのではないだろうか。たけしのファンという人にお話を聞くと、パリではボボ族に、北野武のファンが多いそう。ボボ族とは、ブルジョワ・ボヘミアンーつまりブルジョワなんだけれど、精神はアヴァン・ギャルドで、ボヘミアンなノリの人たちのこと。上質なものが好きだけれど、それをそのまま使いこなすのではなく、わざとはずして使う、着るといったクラスの人たちが、北野武を好きなのだそう。そして、日本オタクの若いパリっ子にも人気があるのは知っている。

 今回はその映画監督としてではなく、北野武/ビートたけしのすべての世界を、カルティエ財団全階で紹介する試みとのこと。1階は、たけしの子供時代に馴染んで来た世界、そして、地下では、映画「HANABI」のときに描いた作品や今回の展覧会用に描かれた油絵などが展示。ちょっとサヴィニャック風なタッチのものや、確かにペンキ屋の息子さんだったんですねといったタッチなものなどがカラフルに展示されている。これらすべてが、フランス人の目にどのように映るのか、ぜひ知りたいものだ。

「北野武/ビートたけし展」
Fondation Cartier pour l’Art Contemporain
3月11日〜9月12日まで




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by madamemariko | 2010-03-11 11:20 | アート

「ジル・ゴリチ新作展」

こんにちは。
一昨日はひな祭り。パリに暮らしていますが、日本の四季は感じていたいので、毎年お雛さまを飾っています。箱から出さないのも可哀想だし。パリのアパルトマンで見るお雛さまは、なんだか新鮮に映ります。白酒はないので、ワインで乾杯しておきました♪

 フランスのバスクとパリにアトリエを持ち、パリ画壇で活躍するジル・ゴリチ氏の新作展覧会が、東京、日本橋三越本店で、3月3日から始まった。私は残念ながらパリにいるので、この展覧会は拝見できないが、新作はやはり気になるところ。

 ゴリチ氏を初めてパリで取材したのは、3年くらい前のこと。白髪のダンディな紳士で、美術や文学、音楽、食に造詣が深く、ギターやハープも弾きこなすという多彩ぶり。その時は女性誌の仕事だったが、その後メンズ系の雑誌で、またご登場いただいた。特集内容は、「世界の時計好きが選んだ、いま欲しい腕時計」。ゴリチ氏は、古いジャガー・ルクルトやロレックスなどを持っていらっしゃっるのを知っていたので、お願いしたのだ。彼が選んだのは、「ブライトリング」のコックピットタイプだったが、雑誌が発行されてから、その記事を読まれた俳優の高倉健氏が、なんとこれと同じ腕時計をお買い上げされたという後日談がつく。とても美意識の高いゴリチ氏が、その腕時計を選んだのは、スポーティでありながらエレガントなエスプリがあるところ。絵の作品に関しても同じことが言え、静物画にしても風景画にしても、本人の薫り高いエレガンスが感じられる。

 お父上は、今も画壇のトップで活躍中の巨匠のアイズピリ。親戚には、同じく画家の鬼才、アントニオ・クラヴェもいて、血筋の良さはピカイチだ。画風はそれぞれ異なるが、アーティストとしてのスピリットが感じられる。日本での展覧会はある意味「日本仕様」で、エレガントな上がりだと想像するが、ゴリチ氏の真髄はもっと違うところにあるような気がする。バスク出身であることを誇りに思い、そこから影響を受けたものが叡智となって、作品のあちらこちらから匂いたつ。そんな作品が、ゴリチ氏の骨頂だと思う。

 とは言っても、色使いはいつも美しい。以前にパリで個展を開かれたときの作品などは、例えて言えば、丹念に熟成して出来上がった色の煌めき、というところだろうか。忘れられない美しい色に満ちていた。花菖蒲のような紫、闘牛をイメージするような赤、熟成されたブレンドのコニャックのような色…。溜め息が出るような色彩に釘付けになった。さあ、今回の日本橋三越本店、プレスティージの高い特選画廊での展覧会。日本のゴリチファンの方にも、じっくりその質の高さを味わっていただきたい。画廊の方のお話では、今回は我らがゴリチ氏のDVDも発売されるそう。みんなでご贔屓になっていただき、画家の本質に迫っていただきたい。

「ジル・ゴリチ新作展」
日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
3月3日〜9日まで
http://cache.yahoofs.jp/search/cache?p=ジル・ゴリチ/三越日本橋




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by madamemariko | 2010-03-05 03:48 | 美術散歩

フェルメールの思い出

こんにちは。
東京に帰省しているパリ在住の友人からメールが届きました。東京では梅が咲き始めたとか。なんだか風流でいいですね。パリもほんの少し暖かくなったような気がします♪

 旅と言えば、一昨年にオランダに出かけた「フェルメールの作品を見に出かける旅」は、印象的だった。フェルメールだけに集中して行くので、旅もごくシンプル。アムステルダムの運河沿いを散歩し、ちょっと雰囲気のあるお店で軽食を取る。そして、アムステルダム国立美術館へ。外壁に
「牛乳を注ぐ女」の大ポスターが掲げられている。残念ながら館内は撮影禁止だったが、「青衣の女」や「小路」などを鑑賞する。そして、「牛乳を注ぐ女」も実物のほうがずっと素敵だ。

 翌日は列車に50分ほど揺られて、いちばんの目的のハーグのマウリッツハイス美術館へ。はやる心を落ち着かせながら、意外に小さな部屋に飾られた「真珠の耳飾りの少女」と「デルフト眺望」をじっくり見る。長い間、そこに立ちすくんでいた。なんとも形容しがたい、美しいフェルメール・ブルー…。心のなかに一条の光が感じられるような深遠な光と色に、目眩を覚えた。




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by madamemariko | 2010-02-20 23:57 | アート

マグリット新解説③ Magritte ③


こんにちは。
パリはまだまだ寒い日が続いています。それでも青空がのぞくと、みんな一斉に公園のベンチに出たりするのですから、どれだけ春を待ちのぞんでいることやら。マレのヴォージュ広場では、芝生のグリーンと雪の残った地面の白のコントラストが妙に面白かったです♪

 久しぶりにベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドである森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご紹介。森さんは、最近ではNHKの「迷宮美術館」で美術解説もなさっているそう。
 ここで、マグリットの経歴を簡単に説明しておこう。マグリットは1898年、ベルギーの西のレシーヌに生まれた。1904年から1915年まで、シャルルロワ近郊のシャトレに住む。1912年に母が入水自殺。1916年に、ブリュッセルの美術学校に入学。1922年に、幼なじみのジョルジェットと結婚。1925年、ジョルジュ・デ・キリコの作品「愛の歌」に触発され、シュルレアリスムヘ進む。1927年、ブリュッセルで初の個展。その後、パリに滞在し、フランスのシュルレアリストのリーダー的存在だったアンドレ・ブルトンらと交流。しかし、ブルトンとは相容れず、1930年にブリュッセルへ戻る。以後、ブリュッセルで創作活動を続け、1967年に没する。

 3回目は、森さんおすすめの作品のひとつをご紹介。夕闇迫る街。上空には木の葉が描かれその真ん中に満月がくっきり。作品はどこかで探すか、ベルギーのマグリット美術館で見てくださいね!

「白紙のページ」The Blank Page 1967年 
これはマグリットが好きだった詩人の一人で、19世紀のフランスの象徴派詩人マラーメを称えてつけられたタイトルだ。マラーメの詩には白紙の部分が多く、また「ページ」というタイトルの詩もあった。この絵でマグリットが言いたかったことは、1956年に同じアイデアで描かれた最初の作品「9月16日」で知ることができる。「9月16日」という作品は 大木の木の葉の前に三日月が出ている絵だ。それでは どうして「9月16日」というタイトルがつけられたのか。残念ながら1956年の9月16日には これと言った特別な出来事はない。しかし、その一月後に 17000人もの犠牲者をだしたハンガリー動乱があった。民主化と豊かな生活を求めるハンガリーの民衆を、ソビエトが武力で弾圧した事件だ。しかも画面上の三日月は ハンマーと鎌をあしらった旧ソビエトの国旗の鎌によく似ている。つまり マグリットは木の葉に隠れて見えないはずの月を前面に出すことで、信じられないことが起こった。その信じられないこととは、ハンガリーへのソビエト軍による武力介入だったのだ。もっと面白いのは、9月16日をフランス語で書くと、seize septembre となり、頭文字はssとなる。つまりナチスの武装親衛隊の名前になる。どれだけマグリットがソビエト軍のハンガリー介入に憎悪感を抱いていたか想像できる作品だ。

 マグリットの作品は、「目に見える思考」と置き換えられる。単なる静かな夜の風景ではなく、その静かな絵の狭間に強烈な社会的諷刺が横たわる。淡々と、しかも鮮やかな皮肉を込めた作品に、マグリットの冷静な視線が感じられる。




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by madamemariko | 2010-02-14 06:46 | 美術散歩

バルテュス節子氏の展覧会 Setsuko Klossouwska de Rola

こんにちは。
パリは寒さからようやく抜け出し日中で6度くらいまで上がり、春のきざしが見え出しました。パリジェンヌたちは春の装いをどうするか、やっとそんなことを考える気分になってきたようです♪

 現代具象絵画の巨匠、故バルテュスの夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラさんの個展が、
1月11日からパリの吉井画廊で始まった。節子さんとはバルテュスを通して35年のおつきあいという吉井長三会長が企画されたもので、エチュードを中心に12点の新しい作品が展示された。

 ヴェルニサージュの日に、吉井会長のお取り計らいでお話を伺わせていただく機会を得た。節子さんには、数年前にスイスのご自宅、グラン・シャレに取材でおじゃましたことがある。久しぶりにお目にかかる節子さんは、彌勒菩薩のような崇高な表情がはっとする美しさ。紅鳶色の赤のお着物がことのほかよくお似合いだ。

 「現在はなんでも便利になり、それらに呑み込まれてしまい、本当に大切なことを見失いそうになっているような気がします。そんななかで、私は五本の指を動かして絵を描いたり、手仕事をしたいと考えています」。そうおっしゃる節子さんの作品が、画廊の階下で静かに、しかも何かを訴えかけるように並ぶ。

 「長くヨーロッパに住んでいると、いろいろな形でギリシア神話に接っします。私はギリシア神話に登場するレダやミネルヴァ、エコーなどに心惹かれ、今後こうした題材をもとに描きたいと思っています」。快活に話をし、外の世界に興味を持ち冒険心に溢れ、精力的に行動される節子さんは、ある意味ギリシア神話に出てくる女神のひとりのような存在。そんなことを感じさせられる素敵な展覧会だった。

Galerie Yoshii
「Setsuko Klossowska de Rola」展
8 Av. Matignon 75008 Paris tel:01-43-59-73-46
〜1月30日まで。

写真:節子さん、節子さんと吉井画廊の吉井長三氏、節子さんとジュエリーデザイナーの娘のハルミさん、ハルミさんのご友人で著名なプランス・ド.サヴォワ氏と夫人で女優のクロチルド・クローさんらに囲まれて。岩絵の具などを使った繊細なタッチの作品。アトリエでは、モーツァルトのあらゆる音楽に触発されるという。
 



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by madamemariko | 2010-01-25 04:00 | 美術散歩

マグリット新解説②  Magritte ②

新年明けましておめでとうございます。
カウントダウンのときには、近所から「Bonne Annee(新年おめでとう)!」の声があちこちから聞こえ、車のクラクションを鳴らす音が高らかに響き、新年の幕開けを実感したところです。
皆様、今年もどうぞ良いお年をお過ごしください♪

 先月から、ベルギーの王立マグリット美術館の公認専属ガイドである森耕治氏による、ベルギーの国民的画家、ルネ・マグリットの作品の新解説をご披露している。マグリットのことを調べると、小市民を装ったマグリットの伝記が書かれている。が、果たしてそこに書かれていることは真実なのだろうか。彼が描いた作品は謎に満ちたメッセージとも捉えられる不可解な内容の作品が多い。これはなぜなのか?マグリットに興味を持った者なら誰しも感じることで、これを美術的見地からではなく、心理学的に検証しようとした人物がいる。それを私に教えてくれたのが森氏だった。

 その人物とは、ベルギーのルーヴァン大学で講師を務める、精神分析学者のロワザン博士だ。彼はマグリットの作品に魅せられ、マグリットの心理について小論文を書くつもりで、彼が幼少のころに過ごした場所を訪れた。そこで、マグリットの隣人だった人に意外なことを聞いたことがきっかけで、マグリットのことについて10年以上も調査を費やしたという。このブログでは、ロワザン博士が調査した内容や森氏のことをご紹介しながら、マグリットの作品を繙いていきたい。

 2回目は、マグリットファンが好きな青空が出てくる作品をご紹介。私もとても気になる作品のひとつだ。森氏の解説をお楽しみください。

「帰還」1940年 
星の光る夜空に、真昼間の青空をくりぬいたハトが、卵が三つある巣に戻ってくる。夜と昼間の組み合わせという点では後の「光の帝国」を彷彿させるが、ここで肝心な点はそれではなくて、この絵が制作されたいきさつだ。
1940年5月10日に、ドイツ軍はベルギーに宣戦布告なしに進入してきた。そして5日後の5月15日には、ドイツ軍はパリに向けて進軍を始めていた。そこでマグリットは親友スキュトウネール夫妻と汽車でフランスへの脱出をはかる。でも妻のジョルジェットは盲腸炎に苦しみ連れて行くことができなかった。そしてマグリット自身もブラッセル発のパリ行きの汽車がなくなっていたために、立ち往生していた。ようやくフランス国境をこえてフランスのリールまでたどり着き、そこからパリ行きの列車に乗ることができた。パリに着くと、今度はパリ郊外の友人クロード・スパークの家に行き、預けてあった自分の作品を取り戻して金に換え、フランス南西のカルカッソンへ逃げた。このクロード・スパークという人物は、戦前・戦後ベルギーの外務大臣を務めたオンリ・スパークの弟だ。大変興味深いのは、当時クロード・スパークはポール・デルボーの親友でもあって、マグリットがたずねていったスパークの家は、1948年の暮れに、ポール・デルボーがタムと駆け落ちしていった家でもある。
残念ながら親友スキュトウネール夫妻はジロンド地方でピカソと出会い、マグリットはたった一人でカルカッソンにたどり着き、そこで耐乏生活を余儀なくされる。一か月後にスキュトウネール夫妻がカルカッソンに来てくれたものの、彼の頭の中にはベルギーに残したジョルジェトのことしかない。何とかしてベルギーの妻の下に戻りたい。そう願うのだが、占領下で簡単にはベルギーに戻れない。おまけに、列車で旅行するには自由通行証が必要で、それが取れる見込みもない。とうとう彼は自転車でベルギーに戻る決意をする。でも、あっという間に力尽きて、カルカッソンにまいもどった。そして、8月4日にとうとう自由通行証を入手したが、戦争中のことゆえ、なにが起こるかわからない。しかも彼はナチスから退廃芸術とみなされていたシュールレアリスムの画家。そこで彼はニースまで避難していたスキュトウネール夫妻に「ベルギーに着く前に、もし死んでしまったなら、ジョルジェットに、最後の瞬間までおまえを愛していたと伝えてくれ」と書いた遺書を郵送して出発した。この絵は、そうして命がけでたどり着いたベルギーの妻のそばで描いた作品だ。だから「帰還」なのだ。

 解説を読むとマグリットの生きた足跡が見えてくる。平和を希求する気持ちか、それとも別の意味なのか、マグリットの深層心理が明暗のある描写のなかでおぼろげに浮き彫りにされてくる。




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by madamemariko | 2010-01-02 04:35 | 美術散歩

マグリット新解説①  Magritte ①

こんにちは。
パリは今週は雪が降り、気温が1度前後とすごく冷え込んでいます。こんな夜はお鍋に限る!私は土鍋を大・中・小と持っているので、その日の状況に応じて、使いわけています。ひとりで食べるなら、おひとりさま用鍋。親しい友だちを呼んで食べるときは、2人用の中鍋、大勢で食べるときは大鍋で。水炊きや鴨鍋、豚&白菜鍋、石狩鍋などを作りまりした。日本酒やワイン、シャンパンをお供に楽しんでいます♪

 今年の5月末に、「日経ビジネス」の読者向けライフスタイル・マガジン「日経プライヴ」の取材で、ベルギーのブリュッセルに出かけた。6月に新しくオープンの「王立マグリット美術館」の取材のためだ。それまでマグリットのことと言えば、教科書に出てくる絵画や作品の「光の帝国」のことくらいしか知らないので、急いで作品や経歴などをネットで調べたり、画廊関係者にお話を聞いたりして、下調べをした。

 現地に着いたら、美術館の公認専属ガイドで美術史家の森耕治氏が、マグリットの作品について説明してくださったのだが、それがすごくユニークで詳しくて、私は思わずその説明内容に聞き入った。パリに戻ってから、いくつか質問内容があったので、森氏にいろいろ電話でお伺いしているうちに、森氏は「マグリットの通説の伝記は実は真実ではなく、もっと本当の真実があるのです」とおっしゃる。たとえば、マグリットの母は原因不明の自殺をしているが、それには確固たる原因があったのだなど、次から次へと話される内容に驚かされた。マグリットの熱烈なファンでもない私が聞いても、興味深い話。その内容は追々ご説明しながら、私がはまった、森氏が膨大な資料からまとめたマグリットの作品の新解説について、森氏のご了解を得て拙ブログでご披露させていただく。最後にその作品の画像も入っているので、ご覧ください。

 1回目は、私がいちばん興味を引かれた作品「秘められた競技者」について。森氏の原文の抜粋でご紹介。短い説明の作品もあるが、この作品については長いので、ご了承を!

「秘められた競技者」1927年  
この作品は幅が2メートル近くあり、前年に制作されたシュールレアリスムのデビュー作「迷えるジョッケー」、そして「ピレネーの城」と並んで、彼の作品の中では、壁画を除いては最も大きいもの。しかも、この作品を制作してから30年間は、1メートルを超える作品はほとんど制作していない。理由は簡単で、その後引っ越したエスゲム通りの家の台所兼アトリエが狭すぎて、1メートルを超える大作を描くスペースがなかったためだ。  
この絵には、9本のチェスのコマ、白色の歩兵のポーンが描かれ、その白いポーンには桜の花が咲いているように見える。これが歩兵のポーンだとすると、作品左側には敵の黒いコマの歩兵がいるはず。ところが、実際に見えるのは箱のなかに閉じ込められた猿ぐつわをはめられた女性と、野球に興じる男性二人。さらに奇妙なのは、ボールの変わりに空を飛ぶ海がめ。野球に興じる二人のライバルプレイヤーもいない。
この絵を解釈するには、マグリットが大好きだったエドガー・アラン・ポーの短編小説「メルツエルのチェス競技者」、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」と「不思議の国のアリス」の三作を読む必要がある。
この画面は、空想上のチェス盤の白いコマの陣営の光景なのだ。そして、チェスの白陣営のお話は「鏡の国のアリス」で紹介されている。主人公のアリスが、白陣営のコマボーンになって敵の女王を倒す話だ。それでコマも競技者も 、閉じ込められている女性もすべて白。そして左側の見えないライバルのプレイヤーは、黒色のコマナイトを動かして白陣営に攻撃をかけて、主人公のアリスを捕虜にしようとした。ナイトは敵のコマを飛びこして移動できるコマ。ところがナイト、つまり馬であるはずのコマが、ここではのろのろの空飛ぶ海がめに置き換えられているところが奇妙であり、愉快な点だ。マグリットはこの海がめを、当時のラルース辞典のイラストから借用したといわれている。そして「鏡の国のアリス」では、あやうくアリスが捕虜になりかけたとき、正義の味方の白いナイトが現れてアリスを救った。8個しかないはずの白いコマが9個あるのは、もしかすると、アリスまたはナイトの存在を暗示しているのかもしれない。
そして、背景に見える桜の木は、「不思議の国のアリス」の第8章で、大きな白いバラの木をわざわざ赤く塗る3人の庭師の話として書かれている。また画面上の野球競技者のエピソードは、同じ第八章で現在のゴルフに似たクロケー競技の話として書かれている。今となってはマグリット本人に確認はできないが、このクロケーと野球に似たクリケットは綴りと発音が似ている上に、二つとも当時のベルギーではほとんど知られていないスポーツ。そのために、マグリットがクロケーと野球を混同した可能性がある。また海がめの話は「不思議の国のアリス」の第9章で、「にせ海がめ」の話として出てくる。しかもそのグリフォンという海がめは、もともと学校にも通ったことのある海がめだったが、事情があって鳥のような羽のある怪物になったと書かれている。だから当然この絵のように空を飛べるのだ。
では、タイトルの「秘められた競技者」は何を意味しているのだろうか。よく言われているように、左側の見えないライバルのことではない。解答の鍵はエドガー・アラン・ポーの小説「メルツエルのチェス競技者」にある。
メルツエルのチェス競技者というのは、1769年にハンガリーのケンぺルン男爵によって作られたチェスをする「トルコ人」とよばれるロボット。暗い劇場の中で、6本の蝋燭に照らされたチェス盤のまえに座ったロボットは、トルコ風の服に身をつつみ、左手で実際に、人間相手にチェスをしたそう。でも、エドガー・アラン・ポーは、彼の小説のなかで、このロボットのなかに、実は人間が隠れていて、機械仕掛けの腕を動かしていることを見事な推理で暴露した。
今作品の「秘められた競技者」は、ロボットの中の隠れた人間を暗示している。それは、狭い箱のなかに閉じ込められ猿ぐつわをはめられた、でもなぜか手だけは自由に動かせる女性のことだ。女性は狭い箱の中で、猿ぐつわをはめられているにもかかわらず、自由な右手で棒のようなものを持って、ロボットの左手を秘かに操作してチェスをしている。だから「秘められた競技者」なのだ。

 以上が、この作品の解説だ。実際にこの大きな作品を眺めると迫力がある。解説がなければ、いったいこれは何?と思ってしまう、見る人の想像力を掻き立てる力がある。さあ、これからマグリットの魅力に、どっぷりはまっていきたい。




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by madamemariko | 2009-12-21 12:05 | 美術散歩

「スーラージュ」展 Soulages

こんにちは。
シャンゼリゼ大通りに、昨年同様エコ仕様のクリスマスのイルミネーションが点灯。まるで、星屑のような煌めき。メトロのシャンゼリゼ・クレマンソーからロン・ポワンの間の両サイドには、クリスマス・マーケットや小さな移動遊園地もオープンし、メルヘンな世界。また、クリスマスのシーズンがやって来ました。一年早すぎ!

 パリでも人気の大展覧会に入るには、行列しなくてはいけないので、私は人ごみを避けて、もっぱら夕方から夜にかけて出かけている。楽しみにしていたポンピドゥー・センターで開催中の「スーラージュ」展も夕方に出かけた。夜の美術散歩は、昼間とは違う大人の香りがする。夕暮れ迫る広場からポンピドゥー・センターに入り、チューブ状のエスカレーターで最上階へ。視界が広がり、パリの夕景が一望に見渡せる。

 ピエール・スーラージュの作品は、チュイルリー公園内で以前に行われたアートフェアでも見ていて、私にとっては「黒と光」が気になる存在。ポンピドゥーでは、すでに1979年に大展覧会が開催されたことがあり、つまり、今回はそれから30年経過の展覧会ということになる。スーラージュの絵画はボリューム感の感じられる黒が主体で、ナイフなどでつけられた溝や縞の帯が、独特の光の陰翳を生む。「黒という素材によって反射する光を生み、絵画を構成するのは光だ」ということを一貫して表現した膨大な作品は、圧倒的な迫力を持つ。さすが、ポンピドゥーの展示の配置もセンスがいい。くどくどした解説は不要で、そこにはアーティストの鋭い美意識が充満していた。

*残念ながら、館内の撮影は禁止だったので、雰囲気だけ味わってください!

Centre Pompidou
Soulages
2010年3月8日まで
入場料:12ユーロ




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by madamemariko | 2009-11-29 06:13 | 美術散歩

「今里隆」展 Takashi Imazato Japan, and so beautiful

こんにちは。
先日、マルシェで栗をたっぷり買ってきて、栗ごはんを炊きました。おいしくできましたが、栗の皮むきで手が痛くなってしまいました。これも秋の風物詩のひとつでしょうか。なーんて、めったに炊かないのですけれど♪

 建築家の今里隆氏に、パリで初めてお会いしたのはちょうど1年くらい前に遡る。シャンゼリゼ近くの老舗の吉井画廊で、「マーク・クチュリエ」展を見に行ったときのこと。その展覧会で1点、氏が建築された平山郁夫美術館の屋根を撮った写真がコラボで飾ってあった。「なんて、たおやかで潔い美しい屋根と塀だろう」と、その建築があまりにも鮮烈な印象で、その場にいらっしゃった今里夫妻に、思わずお声をかけたのが記憶に新しい。

 それから、1年。秘かに楽しみにしていた「今里隆」展が、同じく吉井画廊で開催されることになった。今里氏は、数寄屋造りを基にした日本建築を精力的に作られて約60年。独立前は、巨匠の吉田五十八に師事。吉田美学を継承しつつ、独自の創造を希求。代表作には、国技館や京都南座、日本美術院をはじめ数々の建築作品があり、東京藝術大学で客員教授として教えていらっしゃった時期もある。

 今里作品に共通するのは、無駄を削ぎおとしたシンプルな美しさ。気持ちがいいほどに潔いデザインなのだ。今回は氏にお話を伺う機会も頂き、「建築はプロポーションが大事なのです」と言うお話を中心に伺う。各地にある国宝級のたくさんの建築を見て回り、それらからいろいろなことを学び、自身の建築を構築する。伝統的な技法を駆使しながら、しかし、現代に即したモダニティさえ感じさせる建築。今回の展覧会では、これらの作品をモノクロの写真で紹介。画廊に訪れるフランス人の知識人たちが、みな口々に感嘆のことばを発していた。

 この展覧会を企画した吉井長三氏は、「今里さんの建築は、日本の伝統建築である数寄屋造り、木材を釘を使わず組み合わせていく手法を踏襲した素晴らしい作品。ぜひ、フランスで日本建築の美しさを紹介したかったのです」と、画商の本分を発揮されている。実は、おふたりは独立したころからの知り合いだそうで、「素晴らしい日本伝統建築をぜひ次世代に残していきたい」という薫り高き士気に包まれていた。今里氏は、これから東京の歌舞伎座の再建の総監督として、4年間ほど関わられていくという。こうした日本ならではの文化や財産を国ぐるみで応援していきたいものだ。

写真上から:作品、今里夫妻と吉井長三氏、来廊されたユネスコの松浦事務局長、今里氏

Galerie Yoshii
Takashi Imazato 展 11月28日まで
8 Avenue Matignon 75008 Paris
tel:01-43-59-73-46




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by madamemariko | 2009-11-08 18:50 | 美術散歩

ミュージカル「モーツァルト・ロペラ・ロック」 Mozart L'Opera Rock ②

こんにちは。
秋はキノコが美味しい季節。マルシェで買ってきた香りの高い新鮮なキノコとニンニクだけのスパゲティを作りました。上質なオリーブオイルと新鮮なレモンとニンニク、鷹の爪。もうこれだけで十分美味しかったです。♪

 今年9月から開幕した新作ミュジーカル、「モーツァルト・ロペラ・ロック」が、連日満席の大ヒットを飛ばしている。フランスのミュージカルのヒットの正攻法はこうだ。まずお茶の間のTVで、PV(プロモーション・ビデオ)をさかんに流し、ラジオでレパートリーの音楽をガンガンに流し、キャストを出演させヒットさせるという方式。人々はいつの間にかメドレーを覚え口ずさんでいて、では、ミュージカルを観に行ってみようということになるのだ。

 神童、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトをどうミュージカル化するのだろう、それがいちばんの興味だった。パレ・デ・スポーツのコンサート会場は満席で、おしゃれなパリジェンヌやカップル、小さい子供連れの家族も来ている。いったん始まると、息をつかせない見事な展開。主役のモーツァルトにはミケランジェロ・ロコント、宿敵のアントニオ・セリエリには、フロラン・モト、モーツァルトの妻、コンスタンツェにはクレール・ペロ、妹役にマエヴァ・メリヌ。それぞれが持ち味の声を艶やかに表現している。脇役のキャストも層が厚い。

 そして、舞台は絵画のように美しい。プロデュースは、ミュージカル「十戒」や「太陽王」などを大ヒットさせたドーヴ・アチア&アルベール・コエン、演出は、エディット・ピアフの生涯を描いた映画「ラ・モーム」を手がけたオリヴィエ・ダーン、振り付けは、現在公演中のエルトン・ジョンとチム・ライスの「アイーダ」や「ザ・フーズ・トミー」などを手がけているダニエル・スチュワート、舞台美術と衣装は「太陽王」や国立オペラ・バレエなどを担当しているアラン・ラガルドなどの一流陣。舞台は生誕の地、ザルツブルグやウィーン、パリと次々と変わり、その舞台転換のスピーディなこと。そして、装飾や照明、コスチュームの凝りに凝ったこと!
 クラシックやオペラ、ロックを織り交ぜた超一流娯楽大作をぜひおすすめだ。

Palais des Sports
パリ公演〜12月27日、
フランス全国ツアー(リール、マルセイユ、ニース、ルーアンなど)来年6月まで。



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by madamemariko | 2009-10-29 20:16 | 音楽